みなさまもご存知の通り、2020年度から大学入試のシステムは大きく変わります。現行のセンター試験が廃止され、「大学入学共通テスト」が導入されます。これまではマークシートで回答でしたが多くの教科で記述式の問題が導入され、特に全ての大学で要求される英語においては、これまで「読んで聴ければ」良かったものが、「話す・書く・聴く・読む」の4技能が必要となり、そしてこの4技能を重視した英語の外部認定試験(TOEFL・IELTS・TEAP・英検)などを活用する入試形態も今以上に増加することでしょう。こうした傾向は特にその入試形態の自由度が高い私立大学で顕著に見られ、現在でも外部認定試験で一定のスコアを満たせば一般入試の英語が免除になるケースも多く見られるようになりました。
また、私立大学で最難関に数えられる早稲田大学の政治経済学部はその入試形態を大きく変える事を既にアナウンスしており、大学入学共通テスト(外国語・国語・数学・選択一科目)を合計で100点、外部認定の英語試験(30点満点)と学部独自試験(日英両言語による長文読解70点満点)の合計200点満点による選抜となり、早大の他学部もこの方式に追随するとも言われています。私大の定員厳格化と数学の義務化と言う流れは今後の大学入試の傾向を大きく変えることになりますが、共通の要素として要求されるのは「英語力と論理的な思考能力」が「知識偏重のテスト」より重視されると言う点です。今後の学生は「受験に留まらない幅広い分野の知識を日頃からよく考えること」が要求されることになるでしょう。
<英語力重視と数学義務化に舵を切る早稲田大学政治経済学部>
こうして各大学がその入試に独自性を出して行く中で、これまでのように「似たようなレベルの大学を併願する」と言うことが少しずつ難しくなって行きます。例えば東京大学や一橋大学を第一志望にする学生が、対策なしに早稲田大学や慶應義塾大学に合格することは、これまでのようには行かなくなるでしょう。また同じ私立大学でも、早稲田と慶應義塾の入試は今後、全くの別物となってしまいます。今後の学生には高校生のうちに、「どこの大学を第一志望にして、何を勉強するか」を明確にしておくことが求められます。
一方で、入試形態が大きく変わっても社会の中でなかなか簡単には変わらないであろう事も存在します。それは今も昔もそしてこれからも、「学歴の差は就職活動の時点で明確になり、一生ついてまわる」と言うことです。昨今の就職活動でたびたび話題になる「学歴フィルター」と言う存在は企業であれば当たり前のように存在するものであり、説明会の時点であからさまに切られることが例え無いとしても、エントリーシートを提出してみればそれはすぐに分かることです。それは差別とお感じになる方も多いと思いますが、企業側からすれば効率的に採用を行うためには完全に理にかなっている事です。エントリーをして来る学生全員と面接を行える企業はまず存在しません。大学入試とはすでに就職における競争の一部なのだと言うのが現実です。「学歴は差別だ」と言い訳をする前に、目の前の受験を勝ち抜くことが当たり前ですが非常に大切です。その努力の結果を企業が第一の評価基準とすることは、しごく当たり前のことです。
さらに細かく見て行けば、一部の企業や組織には「学部フィルター」まで存在することもあります。官僚組織であれば昇進するためには東大法学部の学歴が必要であるのは周知の事実ですし、僕が就職活動を行った企業の中には「早稲田大学は政治経済学部からしか採用しない」と思われる企業もありました。社会とはブラックなものだなと思いますが、もし将来に叶えたい目標があるのであれば、学生のうちにこうした社会の現実を知っておくことも大切です。一流企業の「学歴フィルター」であれば、私立大学であればその境界線はGMARCHである事も有名な事実です。
では大学選びはどうすれば良いのか、と言う究極のテーマですが、僕の個人的な考えとしてはやはり、「将来どんな事をしたいのか」で決めた方が良いかと思います。何故なら就職とは、一律に大学の偏差値に比例するとは限らないからです。
例えば「将来は省庁で働きたい」のであれば、前出しましたが東京大学、それも法学部を卒業していることが最低条件と言えます。他学部や他大学から省庁へ行く事も可能は可能ですが、そこでの昇進には明らかな差がつきます。「入る前から勝負は既に決まっている」のが現実です。また、公務員ではなく一流企業での就職を希望するのであれば、日本経済において最大の影響力を持っているのは、実は東京大学ではなく慶應義塾大学です。実際に上場企業の社長の出身大学をランキングにすると、2018年時点で
① 慶應義塾大学 260人
② 東京大学・早稲田大学 172人
④ 日本大学 81人
⑤ 京都大学 79人
と、慶應大学の勢力は他大学を圧倒しています。その背景には「慶應三田会」と呼ばれる卒業生のネットワークがあり、この卒業生の強固な結びつきがこうした圧倒的な状況を作り出しています。日本の富裕層や財閥の子息が受験の道より慶應幼稚舎を選択する理由もここにあります。慶應幼稚舎にはそこでしか築くことの出来ない、一般の人々には想像すら難しいような日本最強の人脈ネットワークがあるのでしょう。逆に考えれば、「慶應閥の企業では他大学の卒業生は昇進に不利になる」と言うことは明確です。もし日本の一流企業に就職したいのであれば、僕は迷わず「慶應に行け」とアドバイスするでしょう。
<日本の財界で最強の影響力を持つのは慶應義塾大学>
一方でこの大まかな流れが当てはまらない企業もあります。例えば電気・ガス・交通などインフラ系の企業やメガバンクでは、やはり東京大学の卒業生が有利です。これらの企業は政府との関係性が重要であることから、トップは同じ学歴である事が望ましいと考える傾向があります。また一方で、マスコミ、出版業界やジャーナリスト、政治の世界を目指すのであればその世界に強みを持つのは早稲田大学と言われています。このようにそれぞれの組織や企業にはそれぞれに影響力を持っている大学があり、一概に偏差値や学部で勉強した内容だけでは決まらない側面もあります。そうした意味でも、「将来のイメージ」を高校生のうちに作っておくことが大切です。
これもおかしな話に聞こえるかも知れませんが、「東京の大学へ行くか、地方の大学へ行くか」も実は無関係ではありません。東京に本社を置く企業へ行きたいのであれば、東京にある大学を卒業する方が圧倒的に有利になります。特に一流企業であれば、地方の大学であれば旧帝国大学の国立大学以外からは、もうそこに就職出来る可能性はほとんど宝くじを引くようなものです。東京で就職活動を行うこと自体も大変になりますし、企業の人事部は地方の名門大学や国立大学よりも、多少の偏差値の差であれば東京の有名私大を好む傾向があります。逆に関西や地方に本社を持つ企業は、その地域の大学から優先的に採用する傾向があります。本社が大阪であるパナソニックは関西の大学を優先に、愛知に本社のあるトヨタであれば名古屋周辺の大学から多くの人材を採用しています。もちろん地方自治体の公務員になるにはその都道府県にある国立大学がもっとも有利なのは明らかです。就職には実は「地域性」も確実に存在するのです。そして企業へ就職したいのであれば、日本のほとんどの企業の本社は東京に集中している事を疑う人は、おそらくどこにもいないでしょう。
また、もし将来海外で働きたいのであれば、海外の大学へ行くと言う選択肢も有効です。日本の企業へ就職したいのであれば日本の大学が圧倒的に有利ですが、米国や欧州で就職したいのであれば現地の大学を卒業する方が、言語の壁を考慮しても明らかに良いでしょう。世界の大学ランキングでは日本の大学は不当とも思えるほどに低い評価となっていますので、海外で働くのであれば日本の学歴はほとんど役に立ちません。ただし、海外で働くと言うことは「外国人として働く」と言うことになりますので、米国の超一流大学へ行く事が出来るくらいでなければ結局、最終的には日本へ戻って来る事になります。海外で日本の学歴が役に立たないのと同様に、日本では米国の超一流大学以外の学歴はほとんど役に立ちません。海外の大学へ行くのであればそのくらいの強い意志が必要です。そして米国で就職をすると言うこと、特にGAFA(Google, Apple, facebook, Amazonの略語)のような世界のトップ企業で働くことは、米国の超一流大学や東京大学を卒業するような人材にとっても全く甘くない事です。世界中の超一流の人間が集まる米国企業ではそのポジションを維持することすら非常に難しい事であり、能力が無いと判断されればアッと言う間にその職を失い帰国することになります。そして世界中の超一流の人材が集まっていても、最終的には米国のネイティブが有利に生き残ると言うこともまた事実です。同じ能力なら現地の人材の方が評価される、それはどこの国でも至って当然のことです。そうした海外でのリスクを考慮した上で最も理想的なのは、日本の大卒の学歴を持った上で海外の有名大学院へ進学する事でしょう。
<GAFAで生き残ることはハーバードを卒業する事より難しいだろう>
そして、進路の選択肢は文系に進むか理系に進むかによっても全く異なります。上記の話はあくまでゼネラリストとして文系に進んだ場合が前提です。文系に進むのであれば東大、早稲田、慶應、あるいは一橋や東京の有名私大に進む方が圧倒的に有利ですが、理系に進むのであれば東大・東工大以外なら地方でも国立大学へ行く方が圧倒的にお勧めです。私立大学は学費が高いと言う問題もありますが、技術・研究職である理系は各企業や組織がそれぞれの大学の研究室と密接に結びついており、そして研究室の質を決める予算は国から国立大学へと圧倒的に優先して配分されるからです。理系は分野にもよりますが、東大、京大、東工大の次の選択肢は確実に地方の旧帝国大学と言えるでしょう。理系から一流企業の研究職へ進める私立大学はおそらく、あくまで一般論ですが早稲田、慶應、東京理科大の3つしかないかも知れません。理系に進むのであればやはり、国立大学が優位と言う状況は今後も変わらないものと考えられます。また愛知工業大学など、私立であっても地域性の優位を生かしてトヨタなどに多くの卒業生を送り込んでいる大学もあります。理系は文系以上に、将来におけるビジョンが大学の選択時に明確である必要があります。
高校生のうちに将来の人生を選択すると言うのは難しい事に聞こえるかも知れませんが、大学に入学した後に考える事も可能な日本はむしろ特殊な方と言えます。アメリカでは大学の専攻次第でその先に出来る仕事はほぼ自動的に決まってしまいますし、欧州では高校に入る時点で大学を目指す進学校へ行くのか、職業訓練校へ行くのかの二択を迫られます。就職活動の直前まで自分の将来を考えることができる日本はある意味では恵まれているのかも知れませんが、そうは言っても進学先の大学にその就職を左右されるのもまた事実です。今後の若者には自分の可能性を広げる意味でも、大学を選ぶ前に海外の事を知り英語の重要性を理解し、自分のやりたい事や大きな夢を目指すキッカケを持ってもらう事を願うばかりです。SSEAは受験のための塾や予備校ではありませんが、英語教育を通して皆さまの将来の可能性、そして日本の未来の可能性を広げるお手伝いをさせて頂ければ幸いです。
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