お台場に「自由の女神」がある理由

皆さん、「自由の女神」って、世界に一体いくつあるか、ご存知でしょうか?

「あれ、そういえばお台場にもあったような」と気付かれる方もいらっしゃるかも知れません。実のところ、偽物やレプリカは世界中に無数にあり、数えることは困難を極めます。実は日本にも、青森県のおいらせ町や北海道の函館などにもレプリカが存在します。ここでご紹介させて頂きたいのは、「公式な」自由の女神像は、世界にいくつあるかと言う点です。

<ラスベガスのホテルにあるレプリカは低クオリティ…>

世界で最も有名な自由の女神像は、世界遺産にも登録されており、ニューヨークのシンボルとなっている有名なものであるのは間違いないでしょう。もしかしたら、アメリカ人でも本物の自由の女神はニューヨークにしかないと信じている人がいるかも知れません。自由の女神は英語では”Statue of Liberty”と呼ばれています。”statue”は「像」を意味する単語で、”liberty”は「束縛からの解放と自由」を表す単語です。つまり直訳すると「自由の像」なんですね、女性の像なので日本語では「自由の女神」と呼ばれていますが、英語ではあくまでも”Statue of Liberty”です。

<ニューヨークの自由の女神像は合衆国のシンボル>

このニューヨークの自由の女神像は、アメリカ合衆国の独立100年を記念して、独立運動を支援したフランス人たちの募金によってパリにて建造され、完成の後に1886年にアメリカ合衆国へプレゼントされたものです。アメリカ合衆国の象徴のイメージが強い自由の女神像ですが、その生まれ故郷は実はフランスなんですね。

実は、世界にはもう一つ、「公式な」自由の女神像と考えられているものがあります。それは女神像の生まれ故郷である、フランス・パリのセーヌ川のグルネル橋のたもとに設置されているものです。大きさは高さ11.5メートルとニューヨークのものより小さいこの「パリの自由の女神像」は、フランス革命100周年を記念して、パリに住むアメリカ人たちによってニューヨークの女神像に対するお返しとして、1889年にパリへと寄贈されたものです。つまりアメリカ人とフランス人は、お互いに自由の女神像をプレゼントし合ったんですね。ですので、「公式な」自由の女神像と考えられるものは世界に2つ、と言うのが正解と言えるでしょう。その他のものは全てレプリカという事になります。

<パリの自由の女神像はセーヌ川の中州にある>

「あれ、じゃあお台場にある自由の女神は、やっぱりただの偽物なのかあ」と思った方、ちょっとお待ち下さい。確かに完全な「公式な」ものとは言えませんが、逆に完全な「偽物」とも言えない代物なのがお台場の女神像です。

まず、なぜお台場に自由の女神像が設置されたのか、その経緯をたどってみることにしましょう。お台場に初めて自由の女神像が設置されたのは遡ること1998年、日本におけるフランス年事業の一環として、本物の「パリの自由の女神像」が約1年ほど設置されたのが始まりです。本物の自由の女神像をパリから輸送して設置し、除幕式には当時の首相であった橋本龍太郎とフランスのシラク大統領も出席して、盛大に点火が行われました。日本は地震国であるため本物の自由の女神像に何かあってはならないと、設置する台座は耐震構造で入念に設計され慎重に設置されたそうです。つまりお台場には「本物の自由の女神像」が1年間、ちゃんと存在していたのです。

ところが…残念なことにこの女神像はパリの大切なものですので、やはり1年後には帰国し、元の場所に戻されてしまいました。しかしこの事業が好評を博したため、「お台場にも自由の女神像が欲しい!」と言う機運が高まり、その後フランス政府からレプリカの制作が認められたため、フランスのクーベルタン鋳造所にて複製されたブロンズ製のレプリカが、2000年に改めてお台場に設置されました。このフランス政府公認のレプリカは実際にパリの本物の自由の女神像から型を取って鋳造されたため、パリにあるものと全く同じ形の、パリ生まれでフランス政府公認の「東京の自由の女神像」なのです!もちろんアメリカとフランスがそうしたように「寄贈されたもの」ではないため公式な像にはカウントされませんが、フランス政府が公認した「準公式の」自由の女神像と言えるものです。これは日本人にも、フランス人にもほとんど知られていない事実で、お台場の自由の女神は決して「偽物」ではないのです。「世界で3番目の自由の女神像」と言っても過言ではないでしょう。

<東京の自由の女神像はフランス政府公認>

僕が10年ほど前に米国西海岸へ留学した際に、ホームステイした家のルームメイトがたまたまフランス人の青年でした。彼の名はセバスチャンと言い、週末に一緒に旅をしたりと割と親しく付き合ったのですが、ある日、自由の女神の話になり「そういえば、東京にも自由の女神があるんだよ」と彼に伝えたところ、彼は笑いながら「バカなことを言わないでくれ、自由の女神は世界に2つだけだ(笑)」と言ったのです。その時、僕はお台場になぜ自由の女神像があるのか、その経緯を知らなかったため、「いや、本当にあるんだって!」としか言えなかったのですが、一方で「ただのレプリカなのかな」とも思い、セバスチャンも全く信用していない様子だったのですが…。帰国してある日、お台場を訪れた際にこの自由の女神像がフランス政府公認のものであることを知り、「ちくしょう、あの野郎!フランス政府公認じゃないか!(笑)」と、今では非常に悔しく思います(苦笑)何しろこのように、日本人にもフランス人にもその経緯と正統性がほとんど知られていないのが、お台場にある「世界で3番目の自由の女神像」です。日本政府はもっと積極的に働きかけて、フランス政府と共に「自由の女神は世界に3つ、ニューヨーク・パリ・東京にある」と宣言したら良いのでは、と思います(笑)

<パリ出身のセバスチャンも東京の女神像の事は知らず>

このように、お台場にある自由の女神像は意外にもれっきとしたものです。皆さんもフランス人やアメリカ人と出会った際は、しっかりとその正統性を教えてあげてください(笑)「フランス政府公認の自由の女神」ですから!

※ 英会話SSEAが『みんなの英語ひろば』の取材を受け、特集記事が掲載されました。ぜひご覧ください!

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